研究
産科?婦人科 高橋 友梨医員、周産母子センター 渡邉 善講師らの論文がNutrientsに掲載されました
東北大学病院産科?婦人科の高橋 友梨医員、同院周産母子センターの渡邉 善講師らの研究グループは、環境省の「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査(注1))」に参加した約8万人の妊婦を対象に、妊娠中の地中海食パターンへの遵守と精神的ジストレス(注2)との関連を検討しました。
妊娠中の食事内容に関するアンケート調査から3種類のスコア(MDS(注3)、rMED(注4)、PMDS(注5))を用いて妊婦の食習慣を評価した結果、PMDSが低い群では精神的ジストレスのPAF(注6)は10.4%と算出されました、一方、他2種類の地中海食スコアでは有意な関連は見られませんでした。
これらの結果から、妊娠期に地中海食パターンを意識した食生活を送ることが、周産期の心の健康を守る一助となる可能性が示唆されました。
本研究成果は2025年11月25日付でNutrientsに掲載されました。
※本研究は環境省が実施するエコチル調査のデータを基に行われましたが、研究者の責任で行われたものであり、政府の公的見解を示すものではありません。
【用語説明】
注1.エコチル調査:胎児期から小児期にかけての化学物質ばく露が子どもの健康に与える影響を明らかにするために、2010年度から全国で約10万組の親子を対象として環境省が開始した大規模かつ長期にわたる出生コホート調査です。臍帯血、血液、尿、母乳、乳歯等の生体試料を採取し保存?分析するとともに追跡調査を行い、子どもの健康と化学物質等の環境要因との関係を明らかにしています。同調査は国立環境研究所に研究の中心機関としてコアセンターを、国立成育医療研究センターに医学的支援のためのメディカルサポートセンターを、また、日本の各地域で調査を行うために公募で選定された15の大学等に地域の調査の拠点となるユニットセンターを設置し、環境省と共に各関係機関が協働して実施しています。
注2.精神的ジストレス:耐え難い心理的な苦痛を感じている状態をさす用語。本調査では、国際的に用いられるK6(Kessler6項目尺度)という質問票を用い、13点以上を精神的ジストレスがあると判定しました。
注3.MDS(Mediterranean Diet Score):地中海食パターンへの遵守度を評価するために最も広く用いられている指標のひとつであり、地中海食をどの程度実践できているかを点数化した指標で、野菜?果物?魚などの健康的な食品を多くとるほど点数が高くなります。
注4.rMED(relative Mediterranean Diet score):MDSをもとに改良されたスコアです。食品の摂取量を「摂取量の三分位」に基づいて 0~2 点で評価し、食事パターンをより細かく、定量的に捉えられるよう工夫されている点が特徴です。
注5.PMDS(Mediterranean Diet Score for Pregnancy):妊娠中の女性にとって望ましい地中海食のとり方を点数化した指標で、妊娠期に必要な栄養素をより反映するよう作られた食事スコアです。
注6.人口寄与危険割合(PAF):ある要因があることで、集団の中でどれくらいの人に病気や症状が起きたかを示す指標です。同時に、「もしこの要因がなかったら、何%の人が病気を防げたか」を推定するためにも使われます。本研究では、地中海食への遵守が低い場合を“要因”とみなし、「全員が地中海食を守れていたら、精神的苦痛の何%が予防できたか」という形でPAFを算出しています。
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